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松田博資調教師と藤沢和雄調教師、2人の名伯楽

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藤沢和雄調教師がついにダービートレーナーとなった。これを機に、改めて「調教師」という仕事について、筆者なりの考え方を綴ってみたいと思う。

そもそも調教師という言葉自体が今の時代、いろいろな意味を含み、多様化している。特にノーザンファーム系列の馬を預かる場合には、外厩施設と連携していくことは厩舎運営に関して欠かせない要素だと言える。

藤沢和雄調教師の話をする前に、ひとりの調教師の先生を紹介したい。それが昨年2016年2月に引退された松田博資元調教師だ。私はこの先生が「“調教師”という言葉が似合う調教師」だと考えている。

松田博師は馬を育てる際にユニークな主張を掲げていた。それは「1200mしか走れない馬はいない」というもの。彼の調教はCWで終いを伸ばす追い切りが中心だった。その訓練を重ねることで、前半はリラックスし、後半の勝負所から末脚を伸ばせるようになる。松田博厩舎の活躍馬には差し馬が多い。筆者自身の経験としても、ラブラバードという馬が松田厩舎で育成されていたが、2歳時はマイルでも行きたがるような馬だった。しかし6歳になったころには2400mでも折り合えるようになった。

【調教師が理想とする馬に育てる】というのが日本語の“調教”のイメージに近いのではないだろうか。これが、松田博資調教師が「“調教師”という言葉が似合う調教師」と書いた理由だ。

一方、藤沢和雄調教師はこれとは一線を画しているように感じる。

藤沢和雄調教師
その調教法は速い時計を出すわけではなく、時計よりも運動量重視。追い切りではなく、長い時間乗り運動を繰り返すことで馬の体力を養うことを目的とした育成法を取り入れている。その姿は「厩舎では何もしない」と誤解され、一般的な「調教」のイメージと乖離があるのかもしれない。

だから「調教=強い追い切り」というイメージを持っていると、藤沢“調教師”という肩書きに違和感があるのかもしれない。「藤沢和雄は調教師ではなく、ホースマンである」、このほうがしっくりくる。

藤沢和師は、イギリスでの修行経験を生かして、馬を「より自然に近い生活」を送らせるように心がけている。馬は本来、1日中、エサを求め、動き回っている動物だ。しかし、トレセンという施設でそのように過ごさせることはできない。調教の時間以外は馬房の中でじっとしていなければいけない。藤沢厩舎では、できるだけ本来の姿に近づけるべく、2時間近く乗り運動を行なうという。

そして、今回のダービーのパドックでもそうだが、彼はしばしば馬に語りかける。一方的に人間がやりたい調教を課すのではなく、馬と対等な立場で話しかけ、馬の気持ちを尊重する。おそらく藤沢調教師は、自分の思い通りに馬を育てようという意識がないのではだろうか。ここは前述の松田博師とは明らかに違うところである。

松田博資元調教師も、藤沢和雄調教師も、どちらも私は尊敬している。しかし両名に対して抱くイメージは対照的だと言える。これ以外にも、経営者的な側面を強く押し出す調教師や、牧場と綿密に連携をとってマネージャー的な役割を果たす調教師もいる。一言で「調教師」といっても、その中身や印象は本当に多岐にわたる。だから、その評価は本当に難しい。

ただ“名伯楽”と呼ばれる方々は他とは異なる不思議な出来事が起こる。そんなエピソードを紹介して、今回の記事を締めくくりたい。

今回の藤沢和雄調教師がダービートレーナーになったことで改めて感じたのは「名調教師と呼ばれる人物の回りには、人にまつわるストーリーが生まれる」ということだ。

松田博資調教師は引退を迎える最終週に厩舎800勝のメモリアルを達成した。その時の鞍上は、厩舎の屋台骨を支えた川田将雅騎手。800勝のかかるレースで、川田将雅騎手はそれまで差しの競馬を続けていたラブラバードで、まさかの先行策に出て見事に勝利を収めた。

川田騎手のサイン入りメモリアルゼッケン

川田騎手のサイン入りメモリアルゼッケン


今回のダービーも同じ空気を感じた。レイデオロは新馬戦から馬の後ろで我慢することを教え続けてきた。しかしダービーではある意味、これまで教えてきたことに反するかのように向こう正面で2番手まで上がっていった。もちろんこれはC.ルメール騎手がレイデオロに対して絶大な信頼を寄せていたことが大きかったが、ルメール騎手に「藤沢先生にダービートレーナーの称号をプレゼントしたい」という強いモチベーションがなければ、今回のような神騎乗は生まれなかっただろう。

調教師にはいろいろな側面があり、その役割や特徴は本当に多様化している。しかし本当に優れた調教師の回りには人が集まり、そしてその人を尊敬し、そこには不思議な力が働くのかもしれない。

近年、名伯楽と呼ばれる調教師が次々に引退し、藤沢和雄調教師も残り5世代で引退となる。果たして、彼らに続く名調教師は誕生するだろうか? この先も、調教師を中心とした素晴らしいドラマが生まれることを楽しみにしたい。

(文=桜木悟史) @satoshi_style

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