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この日はショーグン号も東京競馬場に臨場した

海外の引退競走馬のセカンドキャリア[ゴドルフィン・香港の事例]

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10月8日に東京競馬場で「馬たちのセカンドライフ」というイベントが行われました。

引退した競走馬に関わるNPO法人や組織が集まり、シンポジウムやチャリティーイベントを開催しました。今回はその中でもゴドルフィン・グループの取り組みに興味があり、ダーレー・ジャパンの澤井靖子氏の講演を聞きにいきました。その内容を簡単にシェアしたいと思います。

■ゴドルフィン・グループの取り組み

引退馬の処遇の問題は日本だけでなく、すべての競馬開催国で起こっている問題だ」と澤井氏は言います。

そうした問題意識からゴドルフィン・グループは Godlphin Lifetime Care(ゴドルフィン・ライフタイム・ケア) https://www.godolphinlifetimecare.com/ と呼ばれる馬の一生をトータルで管理・世話するプログラムをニューマーケットやアメリカ、日本などで展開しています。

ゴドルフィンには、ドバイで活躍した名馬が数多く在籍しています。しかし砂漠の国であるUAEには、牧草がいっぱい生えて余生を健やかに過ごせるような牧場はありません。ですので、そうした馬をイギリスなどに移動させていると言います。

このライフタイム・ケアのプログラムの一環に Rehoming(リホーミング) と呼ばれるものがあります。これは繁殖を引退した種牡馬や繁殖牝馬を責任もって世話したり、引退した競走馬を乗馬など新たなキャリアに転用させる準備を行なうものです。

ゴドルフィン・グループでは乗用馬に転用する際に、【休養】【去勢手術】【訓練】をセットにしたプログラムを行ないます。このプログラムの卒業生には、現在、阪神競馬場で誘導馬として活躍するショーグン号がいます。

この日はショーグン号も東京競馬場に臨場した

この日はショーグン号も東京競馬場に臨場した

日本でも7年前からこのリホーミングを開始しており、年間約20頭程度が受け入れ可能・新たなキャリアに向けてリスタートさせているそうです。

このほかゴドルフィン・グループは馬術大会への協賛を行なうなど、競走馬たちがセカンドキャリアを築ける場所づくりに積極的に関わっています。

■香港の事例

ゴドルフィン・グループは世界各国の競馬団体と関わりがあり、今回の講演ではその他の国の事例についても話がありました。

その中で個人的に興味があったのは、香港ジョッキークラブの取り組み。澤井氏によれば、香港ジョッキークラブでは競走馬登録の際に馬主から約100万円程度の引退に関わる費用を事前に預かっておき、引退する際にはジョッキークラブが引退後の預託先を手配するといいます。

ご存知の通り、香港は土地が狭く、余生を送れるような牧場がほとんどありません。そうした問題に対してジョッキークラブが事前に預かっていたお金でオーストラリアやニュージーランドなどの養老牧場を手配する取り組みがあったそうです(注:現在は検疫の問題でオーストラリアへの輸出が困難な状況になっている)。

この制度は魅力的に映り見習えそうな部分がある一方で、調べてみると問題点もあるようです。

たとえば2015年の「ジャパン・スタッドブック」の記事によれば、香港で活躍したスターホース・ヴィヴァパタカは引退後、ニュージーランドに移動するもいつの間にかマカオに移動し、劣悪な環境に置かれていたという事例があります。

この件について、香港ジョッキークラブの担当者は

「ヴィヴァパタカがマカオにいることは最近知りましたが、引退直後に送られたニュージーランドからどうして戻ってきたのかは不明です」

と話しており、香港ジョッキークラブが引退後の受け入れ先は手配するも、そこでどのように管理されていたのか、そしてその預託先から移動したことを把握できていなかったという問題点を示しています。

引退馬のセカンドキャリアを考える上で、受け入れ先の手配はもちろんながら、適切な情報管理も重要であると認識させられる事例だと言えます。

■日本の問題点・長所

この講演の最後に、澤井氏に「日本における馬のセカンドキャリアの状況」について伺いました。

澤井氏は以下の2点を短所・課題として挙げました。

まず日本で広大な牧草地を確保するのはなかなか難しく、牧草が豊富な国に比べてエサ代が割高であるという点。

次に引退後、乗用馬に転用する際に十分な休養が与えられていない点だと言います。確かに現在、日本にはリトレーニング施設が少なく、競走馬から乗用馬に転用するサイクルを早める必要があります。この点、ゴドルフィン・グループのリホーミングには“休養”という項目が明記されており、明確に異なる部分と言えます。

このサイクルが早いことによって転用の費用が軽減されるというメリットがある一方で、おそらく「乗馬に向かない馬は敬遠されやすい」というデメリットも発生すると推測されます。

しかし気性の荒い馬や体調に問題がある馬でも十分な休養期間を設けることで生まれ変われる可能性はあります。この考え方、余裕の作り方は今後、JRAや日本の団体が見習うべき点だと言えそうです。

それでも澤井氏は「日本の引退馬は恵まれているほうだ」と言います。

日本は他国に比べて乗用馬に転用できる率が高いそうです。イギリスやフランスなど乗馬文化が発展している国では最初から乗馬用として生産・育成されている馬が多く、競走馬を転用する需要が少ないとのこと。そういう意味で、日本の競走馬はセカンドキャリアのチャンスがあるという点で恵まれているという趣旨でした。

■今後の改善点

ここからは個人的な見解と、まとめとなります。

まず日本ではJRAを含めた競馬界を巻き込んだ制度づくりが喫緊の課題です。乗用馬に転用する場合にもリトレーニング費用が必要となります。その部分がネックとなり、なかなか日本にリトレーニングが根付いていない現状を踏まえると、費用面の問題とリトレーニング施設の拡充は解決していかなければならない課題です。

費用に関しては、香港の事例を見習って馬主に負担をさせるという手もあるでしょうし、馬券の売上の一部を引退馬の年金として運用するような形が考えられます。JRAも今回のイベントを競馬場内で開くなど競走馬のセカンドキャリアに対して積極的に関わるように変わってきていますので、「これは近いうちに何かしらの進展があるのではないか?」と勝手に期待しています。

そしてJRAにお願いしたいのは、香港の事例のようなことを起こさないことです。つまりお金だけ出して終わり、という形ではなく、引退馬の情報を追えるような情報管理の在り方もセットで考えてもらえたらと思います。

費用の問題だけでなく、それ以外にもセカンドキャリアを管理・世話する人材不足の問題もあります。ただ、この点については日本特有の一口馬主のシステムなど、日本ならではの人のつながりで補える部分もあるかと思います。実際、今回の「馬たちのセカンドライフ」には多くのボランティアが集まりました。そして競馬ファン全体でこうした問題に目を向け、ひとりひとりが何かしらの形で引退馬に関わっていくことが大切ではないでしょうか。

今回の講演会の中で澤井氏が強調していたのは「どの国にも問題があって、それぞれの国で抱えている問題が異なる」という点でした。海外から見習えるところは見習い、そして日本の強みである部分は活かしていく。そして、他国が真似したくなるような馬の文化をつくりあげていければとよいなと今回のイベントを通じて感じました。

(文=桜木悟史) @satoshi_style

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