【ネタバレあり】映画『ドリームホース』感想

桜木悟史の日記

※本記事はネタバレを含みます※

映画『ドリームホース』を見てきました。

先に感想から書くと【一口馬主などオーナーサイドから競馬に関わった人にはめっちゃ刺さる映画】でした。本稿では4つのポイントに注目して、その魅力を伝えていきたいと思います。

①馬を持つ喜びが初々しくリアル

『ドリームホース』では、田舎町の主婦ジャンがひょんなことから馬を育てて、村の人たちと共同所有するストーリーを軸とした群像劇。

しかもそれまでに競馬とほとんど縁がなかった人たちが集まって、ドリームアライアンス(夢の同盟)という名前の馬を競馬場に送り出します。

初めてレースに出るとき、メンバーが一緒にバスに乗り込み、誇らしげに馬主章を見せつけ、ワクワクが止まらない様子は一口馬主になった頃の誇らしげな気持ちになった思い出と重なります。

・レースが待ちきれない日々

・競馬場に何を着ていこうか悩む時間

・新馬戦で見せ場十分の4着に大興奮する様子

こうした細やかな描写がとてもリアルで、こうした気持ちは万国共通なのだと感慨深いものがありました。

②みんなで馬を持つことの難しさ

そして、この映画は「組合馬主」、つまり共同所有ならでは難しさを描写しています。これまでの競馬映画にはオーナーサイドの視点はあっても、共同所有の難しさにフォーカスを当てた作品はほとんどありませんでした。

・活躍した結果、高額のトレードの申し出を受けたら?

・馬の治療に高額の費用がかかるとしたら?

・馬がこれ以上、苦しまないため選択すべき道は?

馬を所有すれば遭遇するかもしれない岐路で、それぞれの人間の価値観がぶつかりあう。この点もリアルに描写しています。

③それでも気持ちがひとつになる、それが競馬

ドリームアライアンスは作中で大怪我を負います。しかし、その出来事を超えてレースへの復帰を目指します。

しかしドリームアライアンスの育ての親であるジャンは「もう怪我をするところは見たくない」と、復帰へ難色を示します。

最終的には周囲の説得もあり、復帰に同意したジャンは競馬場へと足を運びます。しかし、レースが始まり、ドリームアライアンスが障害を飛ぶところを直視できません。

きっと自分にも怪我明けの愛馬がいたら、同じ行動をとっているでしょう。

終盤を迎えて、加速するドリームアライアンス。

まともにレースを見ることができなかったジャンですが、次第にドリームアライアンスが走る姿から目を離せなくなり、最後には大きな声を出して応援します。

「無事に帰ってくれればいい」という想いがありながらも、やはり「勝ってほしい」という気持ちが湧くのが競馬。いろいろな価値観が錯綜しても、人々の願いはそのゴールに向かって収束され、同じ時間に、願いを共有できることが競馬の魅力と言えます。

④人々が競馬に熱くなれる理由

本作品は馬を応援する人々の群像劇というのがメインテーマですが、もうひとつ、裏テーマとも言えるものがあります。

それが作中にたびたび出てくる「スピリット」というキーワード。

作中では、ファイター・闘志など、様々な言い換えがされていますが、“戦う”というキーワードを意識的に強調しています。おそらく、それは、そこに競馬が人々を惹きつける理由があるから。

主人公のジャンもそうですが、人は若い時は競争社会の中を生きたとしても、年を重ねていくにつれ、そうした競争から遠ざかっていきます。本作品の舞台となる田舎町は、まさに競争社会から置いてきぼりにされたコミュニティです。

しかし、彼ら、私たちはその気持ちを完全に忘れたわけではないのです。

でも現実世界はどうにもならず、自分自身がそうした競争の中に入っていくことは難しい。そのような競争とは程遠い凡庸な人生の中で、私たちの中で燻る闘争心を乗せて走ってくれるのがサラブレッドであり、人々が競馬に熱くなれる理由なのです。

※いろいろな競争スポーツはありますが、その中で想いを乗せる対象が人間ではなく(=他者である人間に完全に思いを託すことは難しい)、それでいて生きているもの(=無機質なものに想いは託しにくい)という条件を満たすものは少ない

なぜ人々は馬を所有して走らせることに魅力を感じるのか?

その根底にあるものを教えてくれる点も本作が見ている人たちの心に響く理由のひとつだと言えるでしょう。

最後に

ここまで4つのポイントで本作の魅力についてお話しさせて頂きました。

本作にはいろいろな魅力が散りばめられていますが、やはりクライマックスドリームアライアンスが復帰戦を走る場面です。

本物の競馬さながらの迫力あるレースシーンに加え、この時のドリームアライアンスを見守るジャンの心情描写は、本当に生々しく、見ているこちらまでもがドキドキして、心の中で「…がんばれ…がんばれ……がんばれー!!!」と叫ぶこと間違いなし。上映終了後、「これが応援上映(声出しOK)だったら、どんなに良かったか」と思ったぐらいです。

ぜひ興味がある方は映画館・レンタルなどでご覧いただけたらと思います。

公式サイト
映画『ドリーム・ホース』|CineRack(シネラック

コメント

  1. sea-biscuit より:

    競馬関連の映画といえば私のハンドルネームにしているシービスケット(もはや古い映画ですねw)しか観たことがないんですが、ドリームホースは話題になってるようでぜひ観てみたいと思います!

  2. 桜木悟史 より:

    >sea-biscuitさん
    コメントありがとうございます。
    シービスケット懐かしいですね!(調べたら20年前の2003年公開でした。苦笑)
    あまり書いてしまうとネタバレになるので控えますが、これまでの競馬映画とは一線を画していて、こちらのほうがより競馬ファン・一口馬主寄りなので、より共感できる部分が多い気がします。ぜひ時間があれば見ていただければと思います!

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