【香港競馬紀行】国際化を進める香港、進まない日本

競馬コラム

昨年の香港国際競走デイにプレスとして招待を受けたので、そこで感じたことや、日本(JRA)との姿勢の違いについて述べてみたい。

ただし先に断っておくと、あくまでも私が体験した範囲での話であるということはご承知頂きたい。

まず私たち、日本を含む海外の報道陣は、水曜日のハッピーバレーで行なわれるナイター競馬とレセプションへ招待される。このタイミングで国際騎手招待競走「2022ロンジン・インターナショナル・ジョッキーズ・チャンピオンシップ」が開催されることもあり、世界中から有名なジョッキーたちが集まる。この時点でとても盛り上がる。

ライティングで彩り豊かなハッピーバレー競馬場

一方でJRAの場合は、WASJ ワールドオールスタージョッキーズ(札幌)とジャパンカップが別時期に開催されるので、こうした盛り上がりは見られない。

そして金曜日の夜には、ガラディナーというイベントがある。そこではロンジンワールドベストジョッキーアワードの表彰式も行なわれる。2022年はジェームズ・マクドナルド騎手が受賞した。

授賞式の様子
J.マクドナルド騎手

こうしたイベントと比較すると、やはりジャパンカップは物足りないものといわざるを得ない。基本的にはジャパンカップに乗り馬がいなければ日本に行けないからだ。

逆に日本からは香港国際競走に乗り馬がいなくても川田騎手が香港に行こうとしたように(※最終的にコロナ陽性が判明し、渡航を中止した)、世界中から馬を集めたいと言いつつも、来日する動機や理由、制度を設けられていないのが現状だ。

このあたりは、国際競走としての格を高めたいJRAと、香港国際競走デーを世界的なイベントにしたHKJCとの方針の差であり、一概にどちらが正しいとは言えない。

コロナ対策をしながらの枠順抽選会だったがイベントは盛り上がっていた

JRAは賞金を高くする・国際厩舎を整備するなど方策を進めているが、賞金を高くする方法にも限度がある。加えて、(これは香港も似たような状況だが)欧州の馬は勝つチャンスが薄いため、賞金が高くなることはあまり魅力的には映らない。ほとんどもらえない賞金がいくら高くなろうとも意味をなさないのだ。

それでも、香港はレース以外の部分で「関係者が行きたくなる仕掛け」を用意している。それがガラディナーであったり、メディア向けのパーティーなどの用意だ。

だから、暮れの香港には世界から競馬関係者が集まる。たとえ勝ち目が薄くても、という感じでも海外馬に集まってもらうことが重要なのだ。それが結果的にレースの格・国際的認知につながっていく。

あと私が直接確認した話ではないが、JRAはあまり海外陣営に対して日本への遠征の営業をかけないという。基本的には待ちの姿勢だ。

一方でHKJCは、他国のレースの勝ち馬に「香港に来てください」と営業をかけている。また暮れの香港の勝ち馬に対しても、いろんな国の陣営が営業をかけているが、残念ながら私が見える範囲では、JRAの担当者が積極的に動いている姿は見えなかった。

2022年に東京競馬場内に開業した新国際厩舎

昨秋に東京競馬場に完成した新国際厩舎は非常によい施設だし、検疫に関しては、香港よりも関係者にやさしい仕様になっている。

だが、現状は「行きやすくなった」であり、「行きたくなる」のレベルには達していない。

賞金以外の方法でも魅力を高め、そして自ら営業・情報発信していかなければ日本競馬の国際化は停滞を続けることになり、香港との差が広がっていくことになるだろう。

(文=桜木悟史

コメント

  1. sea-biscuit より:

    日本競馬も香港国際競走やドバイミーティングのような一大イベントを開催するにはJRAを所管する農水省に加えてスポーツ庁、観光庁などといった複数の省庁がスクラムを組めばいいのにと思います
    でも、縦割り行政の壁があるので政治が号令をかけるしかなさそうですね

  2. 桜木悟史 より:

    >sea-biscuitさん
    いろんな省庁が連携できればもっと大きなことはできるんでしょうが、そのあたりは逆に敵対心すらあるでしょうから難しいでしょうね。同じ流れでカジノ構想などもあまりうまく気がしないですね……。

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