前回の記事では主に施行者の部分について述べたので、ここでは私が見てきた香港の競馬ファンたちの姿について述べてみたい。
私が訪問したのは2022年12月で、まだ入国に関する条件が緩和しきっていない状況なので、この年の香港国際競走はほとんど外国人の客はいなかった。
そんな状況でも郊外にあるシャティン競馬場には多くの観客が押し寄せた。例年来ている記者に聞くと、例年の8割程度だというが、大いに盛り上がっていた。
ユニークだったのは、来場者には記念のキャップが配られていたことだ。
これは私見だが、JRAも来場者のプレゼントを抽選にするなんていうケチなことはしないで全員(もしくは先着)に配布したほうがいい。ダービーの日に帽子を配れば、熱中症で倒れる人をいくらかは減らせるだろうし、競馬場にいる人たちがみんな馬耳帽子を被っていたら世界から注目が集まる。
※ただし馬耳帽子は後ろの人の視界をさえぎる可能性があるので別のアイテムのほうがいいかもしれない
さて、日本と香港のファンを見た時、そこまで大きな差はないが以下の点は差として見受けられた。
①日本の競馬場のほうが子供がいる
②日本のほうがカメラ勢が多い
③香港のほうがギャンブル訴求が強い
これらのポイントを意識しながら、香港と日本の競馬ファンの違いについて触れたい。
客層について
客層についてだが、JRAの競馬場は託児所を置くなどファミリー層を意識しているが、香港ではそういう施設は見かけなかった。また実際に足を運んでいる客層も、ご年配の方や恋人などが多い印象だった。
※HKJCの担当者に話を聞くと若年層のファン化は課題とのこと
競馬の楽しみ方について
次に競馬の楽しみ方についてだが、以前に記した通り、香港においてはゴールデンシックスティ級の名馬にならないと、なかなかファンへの認知が高くない。
競馬場でカメラを構えているファンもいるのだが、ジョッキーの名前が書かれたボードを掲げるなど、どちらかというと、馬よりも騎手に対する応援が多いように感じた。
実際、この日はモレイラ騎手の香港ラスト騎乗ということで、最終レース後にはモレイラ騎手に対する惜別の声が多くあがっていた。
日本では競走馬のイラストや写真で盛り上がる文化がある一方で、香港ではそういう楽しみ方はあまり浸透していない。
ギャンブル訴求について
日本人のギャンブル好きも世界トップレベルなので、どちらが上ということもないのだが、上記に記した通り、香港の競馬場に来ると、やれることは馬券を買うことぐらいなので、馬券を買っている層の割合は香港のほうが高い。
日本の競馬場であれば、グルメを楽しんだり、競馬場内を散策したりするなどの楽しみ方がある一方で、香港の競馬場は馬券を買う・レースを見るしか楽しみがない。
なので、場内のビジョンも基本的にオッズなどの予想関連情報を流している時間が長い(たまに外国陣営のインタビューが流れたりする)。
以上、日本と香港の差異について述べてみたが、基本的には似た雰囲気だと言える。
少なくとも、欧州の競馬とは雰囲気や、おそらく競馬に対する向き合い方(紳士のスポーツとしての扱い)とは異なると感じた。同じアジアの競馬ということで、日本人が行っても香港競馬は楽しみやすいと言えるだろう。
(文=桜木悟史)
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