初年度産駒のメイケイエールの暴走気味な快進撃に始まり、今年も京都牝馬Sをララクリスティーヌが重賞を勝利するなど、産駒の勢いが止まらないミッキーアイル産駒は「ディープインパクト系のスプリンター種牡馬」の立ち位置をほぼ確立したと言ってもいいだろう。
そこで今回は現時点におけるミッキーアイル産駒の特徴や配合のポイントについてまとめていく。
ミッキーアイル産駒の傾向
まずミッキーアイル産駒においておおきなポイントになるのは性差だろう。ここまでJRA重賞を勝利した馬はすべて牝馬(メイケイエール・ナムラクレア・ララクリスティーヌ)である。牡馬では兵庫ジュニアグランプリを勝利したデュアリストのみである。
ただミッキーアイルの場合は、地方重賞勝ちのリストン(新春ペガサスカップ/名古屋)もいるなど、牡馬がまったく走らないという訳ではない。
ただ興味深いのは、性差で獲得賞金のアベレージが異なること以上に、適性が大きく変わってくるという点である。
牝馬はメイケイエールに代表されるようにスピードに特化した芝の短距離向き。
牡馬はパワーやスタミナが打ち出されてダート向き・距離は1800m上限でマイルにも対応できる馬がでやすい。
いわゆる「牝馬だと軽さが出る」を表出している種牡馬と言える。
ミッキーアイル産駒の配合分析
次に配合的な話に入るが、上記の性差によって求められる資質や配合は異なってくる。ここでは、より高いパフォーマンスを出している【スプリンター牝馬を目指す配合】について考察する。
まずミッキーアイルに関して言えるのは【サンデーサイレンス・Haloのクロスは歓迎】ということだ。
産駒デビュー当初は「サンデーサイレンスをクロスさせると気性的なデメリットが発生するのでは?」という懸念があり、ミッキーアイルも同様のことが不安視されていた。
しかし、蓋をあけてみればそれは杞憂。ミッキーアイルにしてもエピファネイアにしてもサンデーサイレンスのクロスは歓迎材料だった。
サンデーサイレンス系だとフジキセキ経由(ララクリスティーヌやピンハイ)が優秀。サンデーサイレンス系でも短距離~マイルで結果を出している非中距離型SSが相手に望ましい。
ただ注意したいのは、同じ短距離型SSではダイワメジャー持ちは活躍できていない。
おそらくダイワメジャーが内包するノーザンテーストがミッキーアイルとは相性がよくないと想像される。ちなみにこの理由でサクラバクシンオーを持つ繁殖牝馬と合わせてスピードに特化させる配合も現状、機能していない。
※将来的にノーザンテーストを持つミッキーアイル産駒の活躍馬が出てくる可能性はゼロではないが、おそらくダート中距離、あるいは芝の中長距離が主戦場という異端の存在となっているはずだ。
その他の相性の良い血としては、スピード系ミスプロの代表格であるフォーティナイナーは配合の方向性を明確に決めてくれるので相性がよい。クロフネ・Deputy Ministerも悪くない。
また、シンボリクリスエスなどのロベルト系も好結果を出している。ミッキーアイルのサンデーサイレンスと、母馬のロベルト+HaloでHail to ReasonのE配合をつくる形はヘイローのスピード色を強調する好配合パターンと考えてよいだろう(ララクリスティーヌやデュアリストが該当)
最後に余談だが、ミッキーアイルが持つデインヒル(Danzig)はクロスさせないようが賢明。
このクロスでメイケイエールこそ成功を収めているが、ご存じの通り、気性がこじれるリスクがあり、メイケイエール以外でほとんど成功していないことを考えると、ここは慎重に判断すべきだろう。
種牡馬ミッキーアイル産駒の評価
短距離向きなサンデーサイレンス系を考えた時、フジキセキやその仔であるキンシャサノキセキが種牡馬界を去り、またこれまで大きな役割を果たしていたダイメワメジャーもほぼ引退状態にあることを考えると、ミッキーアイルは唯一無二の存在となりつつある。
そしてサンデーサイレンスのクロスが日本の馬場においてはかなり有効であることを考えると、もっと評価されてよい種牡馬だろう。種付け価格も250万円(2023年)とお手頃だ。
クラシック向きの馬は輩出できない、そして性差の点において1/2のギャンブルになりがちであるものの、牡馬に出てもダートでつぶしが利く点は生産者・購買者にとって、地味だが大きな救いだと言える。
父自身が5歳時のマイルチャンピオンシップで勝利したように、産駒もまた年を重ねてもそこまでパフォーマンスが落ちない、息の長さもまたミッキーアイル産駒の魅力。
多くの魅力を兼ね備えた種牡馬といって差し支えないだろう。
(文=桜木悟史)
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