種付け料250万からスタートし、今では1,200万円まで高騰したキズナ。初年度からビアンフェ[函館2歳S]などが重賞を制覇、サイアーランキングでも21年・22年で連続4位と存在感を発揮。
今年2023年にデビューする2020年度は242頭が種付けされており、POGでも注目すべき種牡馬だ。

キズナ産駒の適性
まずキズナは「牝馬だと軽さが出やすい」タイプの種牡馬といえる。
ソングライン・アカイイト・ファインルージュなど芝のG1でも結果を出しているのは牝馬。
一方で牡馬はディープボンド[阪神大賞典]は芝の重賞を勝っているがスブさが目立つタイプで、これ以外だとバスラットレオン[ゴドルフィンマイル]やハギノアレグリアス[名古屋大賞典]のようにダートで勝てるタイプ。
牝馬は芝・牡馬はダートという分け方でもいいが、ポイントは牡馬だとズブさが強くなるという点だろう。なので、牡馬の活躍馬は逃げ・先行タイプでないと勝負になりにくいという傾向がある。
そういう意味では、POGでは芝の王道路線で活躍できる瞬発力のある牝馬を優先的に検討したい。
距離適性はビアンフェからディープボンドというようにスプリントからステイヤーまで様々。キズナの母系がビワハヤヒデ・ナリタブライアンを輩出したスタミナ豊富な牝系なのでステイヤーでも走れるだけの血統的下地がある。
つまり、キズナ産駒の適性や距離適性は母系の血に大きく影響される。それだけに配合が重要となってくる。
キズナ産駒の配合分析
まずこのサイトの前身でキズナ産駒のデビュー前に「母父シンボリクリスエスがよい」と書いた。詳細はその引っ越し記事に譲るが、その予測通りにソングライン・アカイイトの2頭がG1勝ち。
なので、母方にRobertoが入る配合はよいだろう。ただし前述の記事を少しアップデートするならブライアンズタイムのような重めのロベルトはキズナの牝系と合わさって鈍重に出やすいかもしれない。
この記事を執筆している最中の思いつきだが、「キズナ+母父グラスワンダー」「キズナ+母父スクリーンヒーロー」は面白いかもしれない。まったく実例サンプルはないが、サンプルが出てきた場合には注目してみたい。
閑話休題。先ほども触れたようにキズナ自身が豊富なスタミナを持っており、これを生かすには牝系にスピードのある血を持ってくるのが王道。
ソングラインやファインルージュのように東京でも活躍できる王道タイプを目指すならサンデーサイレンスのクロス、つまりHaloのクロスをつくることがポイント。
サンデーサイレンスに限らず、Haloが入る馬は活躍の確率が産駒全体よりも高くなる。王道路線ではないが、芝向きとしてディープボンド(母父キングヘイロー)・アブレイズ(タイキシャトル持ち)などがこのパターンに該当。
Haloクロス配合の中でもおすすめなのが、母方にもう1つ、HaloかHaloクロスを増幅させてくれる血があるパターン。
Haloの効果を増幅してくれる血として挙げられるのはBlushing Groomあたりが候補となる。
実例でみると…
ソングライン
キズナ+アグネスタキオン+Machiavellian
ファインルージュ
キズナ+ダンスインザダーク+Blushing Groom
アスクワイルドモア
キズナ+ゼンノロブロイ+Blushing Groom
など重賞勝ち馬を輩出している。
ちなみに余談だが、Blushing GroomでHaloの効果を増幅する配合はキタサンブラックにおいても有効な手段である。このあたりは別途、時間ができたら執筆する予定だ。
最後に、これは前述の解説記事でも触れたのだが、実際に産駒のデータが揃ってきた現在でも「フォルティノ・トニービンなどのグレイソブリン系」とは相性が良いことがわかっている。
ハギノアレグリアス(Caro)・ビアンフェ(Caro)・テリオスベル(トニービン)・アブレイズ(トニービン)など、活躍の舞台は様々だが、有力な産駒を輩出している。
種牡馬キズナの評価
急激な種付け料の高騰もあって2023年は満口になっていないが(3月25日現在)、ディープインパクト系においてダートにも対応できる点は魅力的だ。
それでいて、上記のように好配合パターンも明確で、かつそれ以外のパターンでもアメリカ系の繁殖との配合でダートの上級で活躍できる馬も生産できる。
これからは同じディープインパクト系ではコントレイルとの争いとなるが、スピードのコントレイル・パワーのキズナというすみ分けで、産駒の活躍は続くだろう。
鈍重に出やすいだけに、後継種牡馬になりうるだけの活躍を出てくる牡馬がどうかに注目したい。
(文=桜木悟史)
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