先週の桜花賞では、リバティアイランドが優勝。本馬は配合を考える上で、とてもわかりやすい馬です。とりわけ筆者が掲げている「E配合理論」に合致する配合であり、E配合について理解する教材に適しています。
今回はリバティアイランドの配合を見ながら、本馬の配合を評価する流れをなぞってみます。
リバティアイランド配合分析
あなたが一口馬主であれば、まずEl Gran Senor・Best in Showが血統表の中にあることに気づけるかどうかがポイントになります。ここがBest in Showのクロスになっています。
下記がリバティアイランドの母ヤンキーローズの血統表です。

こういった重要な血を覚える暗記は必要ですが、ここに気づけたら「リバティアイランドは絶対に買うべき馬」という気になるはずです。
では、ここからは馬をどのように評価するか?というプロセスを解説します。ここで必要な考える作業は「Best in Showのクロスがどんな効果を生むのか?」という点です。
日本においてこのクロスで最も成功を収めたのがアーモンドアイです。
アーモンドアイの血統表|netkeiba.com
※ロードカナロアのトライマイベストのところにBest in Showが入っています。トライマイベストとEl Gran Senorが全兄弟。
そうなると「Best in Showのクロスを持っていると、すごい爆発力が出るのでは?」と推測します。そこで「ヤンキーローズもキレキレの馬だったのでは?」という当たりをつけます。
今は便利な時代です。これらの情報はヤンキーローズのwikipediaを読めば、すぐに答えがもらえます。
詳細は割愛しますが、wikipediaを読むと、ヤンキーローズは追い込みで活躍していたことがわかります。ちゃんとクロスが競走成績に表れているとわかります。
あと、ここからは簡単な話です。爆発力を継続するには、同じ血、つまりトライマイベストかEl Gran Senorを持つ父を迎えればいいだけです。
いわゆる「クロスを継続する」というものです。
リバティアイランドの父ドゥラメンテはトライマイベスト持ち。これでBest in Showが父母にまたがった3重クロス、つまりE配合が完成したということです。
リバティアイランドの適性予測
ここからはもう少し配合を応用した話をしていきます。
筆者のキャロットクラブ分析記事では、適性予測について綴っています。ここの精度についてはまだまだ改善中ですが、E配合を持つ馬に関しては予測しやすいと言えます。
先ほどのヤンキーローズのwikipediaによれば、ヤンキーローズは芝1100mでデビュー(1着)、そこから距離を延ばしてGI・スプリングチャンピオンS[芝2000m]で優勝。さらにGI・コックスプレート[芝2040m]でウィンクスの3着になっています。
このことから、母方にスタミナがあることが伺え、父のドゥラメンテとも適性距離が似ているので適性距離は2000m前後にあるだろうと仮定できます。
リバティアイランドはまだマイルまでしか走ってないので、世間的には次のオークスへの距離延長の不安が囁かれるかもしれませんが、血統的な見地からすれば問題ないだろうといえるわけです。
ちなみに、この仮説を支える血統知識はもうひとつあって、前述のBest in Showのクロスはスタミナも比較的、豊富になる傾向があると知っているからです。
たとえば、アーモンドアイは2400mのジャパンカップを勝ちましたし、同じクロスを持つブレーナードという馬は、父がロードカナロアながら芝2600mで2勝をあげており、スタミナにも影響していると推測されます。
本馬とリバティアイランドを比較した場合にも、トニービンが共通していることを考えると「リバティアイランドは結構スタミナ持っていそう」という仮説が立ちます。
父替わりの狙い目を考える
これが最後の項になります。ここからは完全に一口馬主向けの内容です。
筆者は一口馬主のクラブ馬を評価する際に、兄姉からの父替わりについて言及することが多いのですが、ヤンキーローズの仔をサンプルとした場合の考え方について説明します。
本来であれば、この考え方に性差も考慮するのですが、ここでは割愛します。
ヤンキーローズの仔を生まれた順番に並べると以下のようになります。
ヤンキーローズの19(ディープインパクト/ロムネヤ)
ヤンキーローズの20(ドゥラメンテ/リバティアイランド)
ヤンキーローズの21(ロードカナロア)
ヤンキーローズの22(キズナ)
年仔なのでロムネヤの成績を見てからリバティアイランドを検討することはできないのですが、仮にディープインパクト産駒の半姉が1,2勝ぐらいしているものの、重賞では通用していないケースだとします。
この場合、リバティアイランドを買うべきかどうかについて考えます。
この時、前述のE配合に気づけば「Best in Showを持たないディープインパクトから、Best in Showを持つドゥラメンテへの父替わりはプラス」と考えることができます。
逆に、2つ下のキズナ替わりについては、配合面ではあまりプラスの評価はできない形となります。
では、ドゥラメンテと同じキンカメ系(トライマイベスト持ち)のロードカナロアはどうでしょうか?
まず父ディープインパクト・父キズナよりは高評価になりやすいと推測されます(最終的には血統表内の相性などを勘案するので、その序列にならないケースもあり)。
次に父ドゥラメンテと父ロードカナロアの比較ですが、ここでは適性距離の方向性を揃えることを考えます。
前述の通り、ヤンキーローズは2000mに対応できることを考えると、産駒にも中距離での活躍を期待したくなります。その場合はドゥラメンテ>ロードカナロアという評価付けを行います。
このあたりは好みで、ヤンキーローズは短距離にも対応できていた繁殖牝馬なので「ロードカナロアでマイルに寄せる」という発想もできますので一概に正解はないと言えます。
そして最後のスパイスとして馬体をチェックして、「中距離向きなのか?マイラーなのか?」というあたりを考えて、配合から導き出される距離適性と馬体が一致しているか確認します。
このあたりまでいくと経験が物を言いますが、筆者はこのような流れで馬の評価を行なっています。少しでも参考になる部分があれば幸いです。
(文=桜木悟史)





コメント