昨年の年度代表馬イクイノックスや、皐月賞で鮮烈な勝ち方をしたソールオリエンスを輩出するなど、SS系種牡馬のトップサイアーになろうとしているキタサンブラック。
今年のPOGや一口馬主の馬選びにおいて中心的存在になるであろう種牡馬キタサンブラックについて分析していく。
キタサンブラック産駒の適性
まずキタサンブラック産駒は全般的に「中~長距離が合っている」と言える。父自身が豊富なスタミナを武器に長距離で活躍していたので、父の影響が強いとも言える。
その結果として、活躍馬は牡馬優勢。ラヴェルやコナコーストなど牝馬の重賞級も出ているので牝馬だと能力が低いという訳ではなく、「牡馬のほうが活躍舞台と種牡馬適性がマッチしやすい」という考え方が適切だろう。
ちなみにダート適性についてはのちほど後述するが、2023年春時点においてはダート適性はあるが、地方競馬ではあまり活躍馬が出ていない点は気になるところ。
そもそも地方在籍のキタサンブラック産駒がどれぐらいいるのかという母数の問題もありそうだが、現在の気づきとして記しておきたい。
キタサンブラック産駒の配合分析
キタサンブラック自身がスタミナを豊富に有しており、かつそれを産駒に伝えやすいことから、母系にはスピードのある血を持ってきて基礎スピードを確立させることが重要と言えそうだ。
具体的にはHaloとBlushing Groomはおすすめ。
まずHaloについてだが、イクイノックス(母父キングヘイロー)やコナコースト(サンデーサイレンス3×4クロス)など、活躍馬の上位はHaloクロスを持っている。
現在、療養中だが、ブラックブロッサムという素質馬も母系にDevil’s Bagを持っており、Haloクロスの活躍馬に該当する。
そして、もうひとつおすすめなのがBlushing Groomで、ソールオリエンスやジャスティンスカイ、そしてダートOPクラスのオディロンもこの配合に該当する。
Blushing GroomはLyphardと相性がいいので、Lyphardのクロスを持つキタサンブラックと相性がいいのだが、それに加えてHaloの効果を増幅する役割があるため、前述のHaloクロスのように基礎スピードのアップにつながっていると見ている。
※違いを述べるなら、Haloクロスのほうが純粋に芝向きになりやすい気がする
ちなみにこの話は公開済みのキズナ産駒の配合分析とも通ずるのであわせてお読みいただくと理解が深まるかもしれない。
あと配合する上で、少し気にかけておくべきなのはノーザンテースト・Deputy Ministerの有無。
キタサンブラック自身がノーザンテーストの持久力に長けたタイプで、これをクロスさせるとスタミナが強調されすぎてしまい、瞬発力に欠けてしまうリスクあり。
たとえば、ガイアフォースはノーザンテースト5×4≒Deputy Ministerのニアリークロスのおかげで(せいで)、まさに押しても押してもバテないがどこまでもキレないタイプの代表例。
他にも桜花賞で早め先頭で粘りこんだコナコースト(母父クロフネ)もこれに該当し、ウィルソンテソーロやマリオロードのようにダート1800m以上で先行押し切りを得意とするタイプに出やすい。
この2つの血は入っていてもパフォーマンス低下とはならないものの、取り扱いが難しいので要チェックと言えるだろう。
種牡馬キタサンブラックの評価
馬体に詳しい有識者と話していると「キタサンブラック産駒の馬体はパターン化しにくい」という話を耳にする。
イクイノックスとソールオリエンスも年齢の違いこそあれ、馬体シルエットは異なるし、馬体派には難しい種牡馬と言えるかもしれない。
その一方で、配合には上記のような成功パターンが存在しているので血統を重視して選ぶべき種牡馬だと捉えている。
イクイノックスを見ていると、ダービーや天皇賞秋などキレキレな姿を見せる一方で、ドバイシーマクラシックの逃げ切りのように持続力の強い一面も見せており悩ましいが、おそらく後者のノーザンテースト色の強い持続力こそ本質だろう。
イクイノックスの天皇賞秋はパンサラッサの大逃げ、そして先日のソールオリエンスも重馬場で前が速いペースで引っ張ったからこそスタミナが活きたというのが筆者の見解。
そのことを踏まえると、もしかすると瞬発力が重視されるクラシックよりは、古馬混合戦のほうがより力を発揮しそうという仮説も立てられる。そこに父譲りの晩成傾向と成長力もあるので、息の長い産駒がどんどん増えていくだろう。
(文=桜木悟史)
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